「消費税インボイス制度って何?」②特例編・対応編
前回は消費税のインボイス制度の基本をご説明しました。今回は、特例と対応についてお話しします。(文中で、適格請求書等=インボイスとします)
1.特例1 仕入税額控除についての経過措置
前回、免税事業者からの課税仕入は仕入税額控除ができなくなると説明しました。
しかし、これには経過措置が設けられていて、免税事業者からでも、今まで通りの区分記載請求書等で、最初の3年間は80%、その次の3年間は50%の仕入税額控除を認めるというものです。
当所3年間は、免税事業者からの仕入でも、支払消費税の80%は控除できるということです。
2.特例2 インボイスがなくても仕入税額控除ができる場合
例外的に次の場合等は、インボイスがなくても仕入税額控除ができます。
(1)売り手がインボイスの発行が困難な場合
①公共交通機関のバスや鉄道、船舶の運賃で3万円未満のもの
②自動販売機による販売で3万円未満のもの
などで、これらはインボイスの発行が免除されます。
(2)買い手がインボイスを受けることが困難な場合
①古物商や質屋や宅建業者が、一般の人などから買取る(仕入れる)場合・・・リサイクルショップや中古車販売、不動産販売業などが該当します。
②従業員に支払う出張旅費、宿泊費、日当や通勤手当
などです。
ただし、これら(1)(2)の場合でも仕入税額控除には帳簿の保存は必要です。
3.特例3 簡易インボイス
不特定多数を相手とする小売業や飲食業、タクシー業等は、相手の名前等一部インボイスへの記載の省略が認められています。
4.インボイス制度導入までの対応
令和5年10月のインボイス制度導入までの準備として、売り手の立場と買い手の立場から考えてみます。
[売り手の立場から]
(1)課税事業者の場合
①まずは適格請求書発行事業者の登録申請
課税事業者は、適格請求書発行事業者にならない選択はありません。制度スタートから登録されるためには令和5年3月末が申請期限ですが、今すぐにでも登録申請しましょう。
②インボイスを正しく発行できる体制を整える
次に準備することは、正しいインボイスを発行できる体制を整えることです。
自社に合った発行形態、様式を見直し、場合によってはシステムの改修などが必要になると思います。
(2)免税事業者の場合
①適格請求書発行事業者(課税事業者)となるべきかどうかの検討
これが一番悩ましい問題です。売上先が最終消費者だけであれば、免税のままで良いと思います。
しかし、事業者の場合は、相手の意向にもよりますが、取引条件等の相談が必要になると思います。なお、取引先が地位の優越性をもって一方的に、課税事業者になれとか、消費税分の値下げなどを通告することは、独占禁止法や下請法などで禁じられています。
[買い手の立場から]
(1)課税事業者で原則課税適用の場合
原則課税では、原則通り売上消費税から仕入消費税を控除して納税額を計算します。インボイスがないと仕入税額控除ができません。この場合の対応は
①仕入先、支払先が適格請求書発行事業者かの確認
仕入先等が適格請求書発行事業者でないと仕入税額控除ができないので、仕入先等が適格請求書発行事業者かどうか(課税事業者か、免税事業者か)を一覧にして確認しましょう。
②免税事業者への対応の検討
必要であれば免税事業者への対応を検討しましょう。ただし、上記で記載したように独占禁止法や下請法などに抵触しないよう、取引先の立場も考えて対応する必要があります。
③経理処理の事務量の増加への対応
インボイス導入後には経理処理において、適正なインボイスかどうかを請求書、領収書等をいちいち確認する必要があり事務量が増えます。事務フローや経理システムの見直しなど検討しましょう。
(2)簡易課税適用者や免税事業者の場合
簡易課税では仕入税額控除は売上を基に計算しますし、免税事業者は消費税を納税しませんので、この2つのパターンでは現状通りの処理で特に問題ありません。
5.利用できる補助金
インボイス制度の導入や、免税事業者が課税事業者になる場合に、経理等のシステムの改修、入替、導入が必要になる場合があります。これらに対して利用できる補助金がありますので、次に紹介します。
①小規模事業者持続化補助金(インボイス枠:適格請求書発行事業者への転換が要件)
②IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠:会計ソフト、受発注ソフト、PC、レジなど対象)
補助金の詳細、手続等については、各ホームページ(小規模事業者持続化補助金 IT導入補助金)をご覧ください。
(注)わかりやすさを重視していますので、税法的に厳密には不正確な表現、不足する事項などあります。詳しい情報は国税庁のホームページ等でご確認ください。